幻想運河を読んで


アムステルダムで起きたバラバラ殺人事件の謎を追うというミステリ

推理小説とは言いかねるところがありますね。変わった視点のミステリなのでなかなか新鮮でした

被害者がなぜああいう殺され方をしたのか。犯人はだれなのか、同機は何だったのかというのがメインではありませんでした。

完全に証拠がそろうわけではないし、犯人を捜していく部分も推理小説のように進むところと、これは(アムステルなので合法である)薬物の見せた幻想なのか現実なのか判じかねる部分があったり、オカルト要素が絡んできたりします

そういう非現実的な部分も含めて、犯人であろうとされる人物と被害者の関係、またその周辺の人々がどういう考えをもって現実に対処していたか。こういう部分がメインであり、犯人捜しの過程で「遺された人」の心理がわかっていき、最後に皆がそれぞれに取った行動は、そしてその結末はどうだったのかというのがテーマですね

ネタバレを避けているのでこういういい方になりますが、確かに推理パートもちゃんと存在しますし、推理小説といいたいくらいの考察、奇想天外なタネや仕掛けもあります。でも結論から言って、推理パートはメインではありませんでした

ある種の悲劇を描いた幻想的なミステリ小説。だと思います