卜伝飄々を読んで


伝説の剣豪、塚原卜伝が老齢に入って、今までの自分のことを思い出したり、世俗的なものに興味がなくなってきたり、名を上げようと挑みかかってくる武芸者をかえりうちにするのに嫌気がさしてきたり・・・

そういった老剣豪、卜伝の日常。

〇南蛮狐

塚原卜伝の後を延々つけてくる若者。卜伝に挑みかかり返り討ちにされた武芸者の身ぐるみをはいで生計を立てているという彼に、色々と思うところのある卜伝の話

・・・年取って、荒事が疎ましくはなってきたが、いままでさんざん返り討ちにしてきたので、色々な人間に狙われていて・・・という彼がであった若者との心の交流。さみしいけどほっこりします

〇鮟鱇の疣

あまり女性にもてなかったという卜伝(妻子はいるけれど)。それでも愛し愛されることは良いことだという卜伝に勝負を挑みたがってるいけ好かないイケメン武芸者のとった卑怯な手段とは

〇蠅の殿

卜伝から剣術を習っている殿様が別の武芸者から卜伝が敵国のスパイと吹き込まれて…国を経営する孤独さと責任に潰されかかっている殿さまと卜伝の話。割と心に刺さりました

〇半々猫

昔勝負をした凄腕の武芸者の倅が卜伝をどうにかすることで名を上げたいと画策するが…家督を譲って隠居同然の卜伝からしてみれば非常に面倒くさいだけの話だけれど、若かったときは自分も同じだったのでわからなくもないと葛藤する話。

名を売る、立身出世するとギラギラしているのも生きるということであろうが、年を取ると別の道もあることがわかると…

〇首無し地蔵

血気盛んな剛の者より、したたかな女性の方が一枚上手、という話でした。生きるって大変なことだなと。

〇月を斬る

卜伝が月をなんとなく眺めていた時に、月を斬りたいと一瞬思ってしまい、酔狂なこととは自覚しながら修行を開始。そこに色々な人間関係の話が絡まり、神とは?仏とは?生きるとは?といった話になります

〇鍋の蓋

伝説の剣豪と言われるまでになっている卜伝の剣術兵法の極意は何なのかという話で、実際のところは神業とかそういうものではなく、徹底して基本に忠実、知恵も何もかも総動員して勝てる勝負に勝っていくという話になる。それを若き日の宮本武蔵が人づてに聞き、色々と思うところがある…