Aria AIの解説が全くの虚構だったので覚えている範囲で
文房具(人格あり)たちが乗った惑星侵略用の船団が、鼬族の支配する惑星を襲撃するSF小説です
長い航行のなか、使い捨てにされるのがわかっている文房具たちの内包する狂気の話と、鼬族の長い歴史の話。ここまでがものすごく緻密かつ壮大で圧倒されます
そして惑星侵略から世界の大カタストロフ(意味深)で筒井康隆節が炸裂して終わるという。慣れた人ならにやりとできますし、慣れてなかったらキツネにつままれた感じかなと
でもこんな小説は筒井康隆さんでなければ書けないでしょうね。圧倒されす
第一部である航行中の宇宙船団のはなしはかなり強烈ですね。あまりに長い年月宇宙船の中にいたがために皆狂気を内包しています。でもよく読んでみると、乗組員一人一人の狂気が、生きていたら一度は考えてしまう妄想や、不条理、不安や恐怖、劣等感といったものを拡大して過激に表現したものではないかと思えてきます。こういうの全くない人間はいてないだろうな、もしくは思春期に色々思うことに内包されているな、と。
あと、皮肉もいろいろ含まれていますね。乗組員の中に医者がいるのですが、彼のコメントが、毒にも薬にもならないテレビ番組のコメンテーターを痛烈に皮肉っているくらいはすぐにわかりました。
指令艦から指令が来てから色々と乗組員達のタガが完全に外れて混沌とした状況に陥りますが、異常な世界では異常な者はそれなりに普通に生きているというか。
その指令の内容が絶望的であるという見解は一致しています。鼬族の住む惑星に対する攻撃命令なのですが、どう考えても実現不可能な内容であるので、彼らの共通点は「絶望」ということになるのと、その絶望という共通点だけでかろうじてまとまっている状態ですね
第二部では船団のターゲットになる惑星、鼬族が支配する惑星クォールの歴史が描かれます。どこかの文明の進んだ惑星の流刑地になっていて、配流されたい鼬族十大種族の文明の発展と、血みどろの権力闘争の歴史が描かれています。地球の近現代までの歴史のパロディがふんだんにちりばめられています。ニヤニヤが止まりません。第二部だけでファンタジー中編として十分読めます。世界観もしっかりしていて緻密かつ壮大な歴史物語になっています
最終的に核戦争勃発の危機の時代になり、所属不明の原潜から放たれた爆弾がドストニアの貿易都市を吹き飛ばします。その破滅の閃光を第一部の船団の侵攻部隊が確認したところで終わります。
一部もすごいですが二部も別の意味ですごい。こんな話を一冊の小説にまとめてしまう筒井康隆さんは天才だなと・・・
第三部は惑星クォールに船団の侵攻部隊が到着し、カタストロフ(意味深)が訪れ、混沌とした悪夢のような世界の話になります。
一つの世界、文明が滅亡するってこういうことなんかな。という容赦のない描写と船団から派遣されてきた狂気をはらんだ面々。かなりハードな世界ですね
第二部は逃亡兵の彼が書いた遺作ということでしょうか?
惑星クォールはもともと流刑に処された囚人の流刑地、ということでしたが、流刑にしたのは船団の本部であり、文具船と戦闘員のカマキリは一部の通りだし、文明が進み過ぎたから送られてきたということかもしれませんね。
ま私なりに思うのは「一炊の夢」というのを言いたいのではないだろうかと。
ネタバレはできませんが、オチを読んだ後なら色々納得するというか(オチに納得できない人はもちろん結構いると思いますが)、経験したことがある人もいるのではないか、という話になります