絵画の写真入りの解説書ですが、おもしろかったので。
解説が非常に興味深かったですね。リビドーの概念を裏付けるような話になっていて面白いです。多神教の時代(性に開放的)→一神教の時代(性に抑圧的)と性の表現が明るいことから後ろめたいことに代わっていくのはなるほどな、と思いました。
最初の方の多神教の時代の神話等をモチーフにした異形の絵画の説明では、何らかの性的なものが表現されているところがある、といのと細かい解説を見ると、女体の化け物の女体の部分が生々しく描かれていたり、と納得するところがあります。
グロかったり明らかに化け物でも、女体の化け物は、という話です。
手の込んだ性の衝動の表現もある、という事を理解してこういう絵画を見ると、発見があります。
一神教の時代になるとまず善悪の表現を美醜に置き換えて表現するところからはじまり、次第に悪魔も肉体美(マッチョ的な)が表現されるようになり、人間はかなり貧相です。
天使はちょっと特殊で、何かの象徴として描かれており、人間的でなくなりへんてこりんな物体みたいになっていますね。でも、明らかに強そうに見えます。
弱弱しく見える天使は従来の人間的な姿をしていますが。筋肉質のもの虚弱そうなのも描かれていますね
キメラにかんしては、確かに無駄というかよく見ると滑稽なところがあり、まさに不完全体であるという感じがします。これもどっかへんてこなんですよね。
廃墟とかの静寂と死を連想させる絵については、ベクシンスキーの絵が大好きなので、非常に興味深いですね。
H.R.ギーガー氏の絵とか造形は明らかに性的なものをモチーフにしているものもあります(エイリアンの頭部とか口のことが分かりやすいです。フェイスハガーなんか形がそのままですしね)が、全くスケベな感じがしないのが印象的です(想起されてもちょっと怖いですけど)
印象に残ったのが
遠くから見るとちょっと怖い人の顔ですが、拡大図を見ると強烈です。水生生物の集合体が人の顔になっている、結構ショッキングな絵です
完全に引き算で構成した虚無的な感じのする絵ですが、ホラーじゃないですか?夜にみるのはちょっと嫌だな。でもインパクトもあるし好きですね